愛宕坂茶道美術館

橘曙覧記念文学館

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福井市

 

平成独楽吟

第12回(平成18年度)受賞作品

平成独楽吟部門
入賞作品(10首)
橘曙覧賞
たのしみは夫の守る溶鉱炉夜空染めるを窓に見るとき
白石 葉子
福井県知事賞
たのしみはジョギングロードの摩崖仏今朝又今朝の貌みせるとき
中出 成之
福井市長賞
たのしみは稲束抱え空高く稲木の上の父に投げるとき
高徳 浩子
福井県教育委員会賞
楽しみは比較されずに私だけ叱ってほめて見てくれる時
鷲田 早紀
福井市教育委員会賞
楽しみは名前を呼ばれふりむくと笑顔で向かえる母を見たとき
棗 唯
福井新聞社賞
たのしみは朝刊くばり引き継ぎて亡父(ちち)が休みし石に座す時
上坂 信行
日本放送協会福井放送局長賞
たのしみは仕事帰りの道すがら海を染めゆく夕陽見るとき
岩佐 浩
福井中央郵便局長賞
たのしみは我と語りし老父母の子供のような笑顔見るとき
武田 桂子
熊本市賞
たのしみは町行く人に亡き母の面影あるを見つけたるとき
高橋 悦朗
歴史のみえるまちづくり協会理事長賞
楽しみは昔囲んだかごめの輪同じ仲間で酒囲むとき
柏屋 敏秋

秀作作品(21首)

楽しみは朝の冷氣を身に浴びて初もぎの茄子拜み摘むとき
愛宕 茂雄

たのしみは白寿の夫(つま)と朝なさな田を巡りつつ歌を詠むとき
小林 ハル
たのしみは大きな石をがんばって割ってでてきた化石を見る時
柿谷 俊之
たのしみは春陽射し入る窓辺にて金子みすずを読みふけるとき
橋本 ゆき
楽しみは小さい頃から背比べをしていた父を追い抜いた時
林田 一紀
楽しみはシュートが入ったその瞬間パサッとする音響きわたる時
山口 駿
たのしみは花嫁衣装を試着せし娘の晴れやかな笑顔見るとき
米澤 幸枝
たのしみは満百歳を越えてなお元気な父とお酒飲むとき
石峯 貞男
たのしみはインクの香り新しき佳(よ)き報道をよみ終へしとき
鎌谷 ちゑ子
楽しみは秋の夕暮れ帰り道金木犀の香りするとき
常廣 玲央
たのしみはやっと飲めたりこのお酒墓前で父と酌み交わすとき
中西 和也
たのしみは幼い吾子らが頬寄せて作りしオムレツ箸つけるとき
大嶋 裕美
楽しみはなやんで買ったプレゼント今でも妻が愛用する時
徳佐 倫正
たのしみは小さな声で若ものが電車で席をゆずるの見るとき
木原 一栄
たのしみはかめを見ながらえさをやりかめもわたしもげんきいいとき
杦 真祐夏
たのしみは初雪降るとさわぎだすクラスみんなで外にでるとき
今井 麻里恵
たのしみはけんかの後の仲直り二人どうじに笑い合うとき
正木 奈々
たのしみはひだり弟みぎに兄まん中にねる母でいるとき
福山 京子
楽しみは時折り正気になる父が頭抱き寄せ撫でくれしとき
堀江 みどり
たのしみは窓いっぱいの虹の橋「一分だけ」と生徒と見るとき
小竹 勉
たのしみは季節の野菜を持ってくる母の元気な笑顔を見るとき
田中 久子

一般短歌部門
入賞作品(9首)
橘曙覧賞
育ちゆく銀河の立つるささやきか
逝きし子あれば夜の耳敏し
日下部 潦太
福井県知事賞
抱きしめて車椅子より移すとき細りし夫(つま)の鼓動つたはる
旭 千代
福井市長賞
走れ走れ熱い男の心の火見ている僕に火が燃えうつる
宮地 駿介
福井県教育委員会賞
車椅子押しくるる孫の声を背に風吹きとほるバラ園にゐる
山本 鍛
福井市教育委員会賞
納棺の父の顔剃る春の水冷たからむとすこし温めて
横井 和幸
福井新聞社賞
介護日誌読めば遠き日蘇り吾が残生の灯はまだ点る
斎藤 幸子
日本放送協会福井放送局長賞
震えてる手で引き直す直線をためらう心しかりつけ引く
山口 信平
福井中央郵便局長賞
春の日の門出の胸に入りまじる期待と不安と桜はなびら
向井 建祐
歴史のみえるまちづくり協会理事長賞
腹痛の母の背中をさする祖母寄り添う影が揺れる日だまり
岡田 和之

                                                                  
秀作作品(21首)
交換台を死守して果てし乙女らの石碑礼して十字路渡る
髙橋 外茂子
豪雪に耐へに耐へたる木蓮のあまたの蕾天を指しをり
岸名 隆一
白萩をこぼして児らの隠れんぼ薄目の鬼が近づいてゆく
北村 純一
予科練のきびしき訓練語るとき元特攻の父は少年
河野 恵美子
病床の半坪足らずを半世紀人生の場とし逝きし弟よ
原 峻一郎
利き耳に廻りてそっと伝言を無口な友に背伸びして告ぐ
杉崎 康代
吾れ二十(はたち)征きし日のこと知る人も少なくなりて吾も老いたり
三輪 輝二
遅蒔きの初秋の豆の収穫に夕餉のみどりことさらに映ゆ 
中嶋 多喜子
熱く赤く飛び散る切り粉目の端に切削速度さらに速める
林田 一紀
この夏もすぐに終わってしまうかな線香花火の火玉が落ちる
柿本 大介  
飛んでくる切り粉と戦う旋盤の作業に友と技術を競う
手島 竜也
少年がブランコ揺らし伸ばす足ひつじ雲さえ蹴とばしそうだ
平井 竜也
鳥たちが蜜喰うたびにくるくると斬首さるる花降りやまぬ
橋本 有子
製図中汗を落としてだいなしの用紙破れば涙が出てくる
松本 龍之介
旋盤で工作物を細く削る目と手で鉄をしっかり送って
内野 真也
ホスピスの窓に夕陽を見つめいる姉にしばらく声をかけ得ず
白石 葉子
伊予鹿島のほろびの跡にさおしかは大いなる角ふりあげて立つ
佐々木 貞子
二十二時赤い電車にゆられつつスーツの男に肩をかす夜
門戸 真理子
リハビリの棟に寡黙の夫残し雪降りしきる夜道を帰る
林 都紀恵
老いてなほ農に働ける祖父の手は洗へど落ちぬ土渋とあり
上敷領 三千代
自転車のペダルさえも踏み外す僕でも明日は勝てるだろうか
楠戸 紀美子
   
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