愛宕坂茶道美術館

橘曙覧記念文学館

福井歴史マップ

福井市

 

平成独楽吟

第13回(平成19年度)受賞作品

平成独楽吟部門
入賞作品(9首)
橘曙覧賞
たのしみは昏き沖より還りきてわが家に灯る明かり見るとき
加古 親
福井県知事賞
たのしみは父と並んで麦を踏み同じリズムになってきたとき
北村 純一
福井市長賞
たのしみはもうじきひゃくのひいばあちゃん
てぶくろみたいな手をさわるとき
細田 麻琴
福井県教育委員会賞
たのしみは孫をタオルで追い掛ける湯浴みの後の賑やかなとき
福島 海光
福井市教育委員会賞
楽しみはノートを替えた最初の日ちょっとキレイな文字を書く時
富永 将
福井新聞社賞
たのしみはぎんなん拾い洗いあげ肌白々と乾きゆくとき
鍵山 奈美江
日本放送協会福井放送局長賞
楽しみはいつもは逆らう鑿先が墨付け通りに進みゆく時
熊 明男
熊本市賞
たのしみはわが歩行器を軋ませて芽吹く銀杏に手触れゆくとき
大津留 直
歴史のみえるまちづくり協会理事長賞
たのしみは息子が食べた空っぽの弁当箱を泡立てるとき
川平 陽子

秀作作品(21首)

たのしみは童女に返りし吾が母と日向に出でて綾取りする時
田中 絢子

楽しみは夕日に伸びた影合わせ友と語らい下校するとき
工藤 裕加里
楽しみは溶接する時鉄材と真っ赤になってケンカする時
合田 一平
たのしみはいえのザリガニえさをやるもぐもぐごくんかみくだくとき
田島 遥奈
たのしみは夫と歩く夕暮れにそっと重ねた影を見るとき
伊藤 久美子
たのしみは通勤列車と並走す夜汽車の窓に夢馳せるとき
松原 幸隆
楽しみは復旧なりし鉄道に乗りて輝く青野ゆくとき
岸名 隆一
たのしみは見知らぬ街を独り行き暫し迷子になってみるとき
橋立 英樹
たのしみは蛍乱舞の里にいて孫の乗りたるバスを待つとき
土居 昭子
たのしみはバイクの音のふと消えて郵便受に耳澄ますとき
林 勲
たのしみは子との球投げ一歩ずつ月日経つごと離れて行くとき
村田 千賀子
たのしみはベランダごしに2時5分、飛行機雲が空分けるとき
今田 紗江
たのしみはさくら散りしく土の上地球ふみしめ孫の立つとき
河野 恵美子
たのしみは新緑の頃生まれ来る内なる我が子が腹を蹴るとき
保位 桜
たのしみは畑打ち終えて洗場に夕餉のにおいもれて来しとき
大嶋 俊子
楽しみは作って間もない巣箱から母呼ぶヒナの声を聴く時
柿本 大介
たのしみはだいこんおろす横に来ておろしますかと夫が言う時
仲下 慈
たのしみは同じ制服姿から素早く君を見つけ出すとき
野田 美和子
たのしみはおこりんぼだったおひさまがニコニコわらうあきになるとき
柏屋 かいと
たのしみは鮭還る日を今日と決め三面川に妻と待つとき
阿部 昌彦
たのしみは夫の漁船の点す灯を幼き子らと浜に見るとき 
小林 ゆき 

一般短歌部門
入賞作品(8首)
橘曙覧賞
ふり返ることなどするなと歩みゆ眩しき春の病棟廊下
横井 和幸
福井県知事賞
人見知りの僕がのびのび思い切りやれる製図の線引いている
森保 翔平
福井市長賞
朝刊を配りし亡父もこの峠難所と言ひしなつかしみ越ゆ
上坂 信行
福井県教育委員会賞
旋盤の切っ先だけに集中し飛び散る切り粉気にせず削る
菅藤 大地
福井市教育委員会賞
あのころは実験室に図書室に暗がりという生きものがいた
斎藤 洋子
福井新聞社賞
ドロドロの鉄の液体かたむけて冷えた砂へと垂らす直線
内田 英孝
日本放送協会福井放送局長賞
空き缶を蹴っても何も始まらず夕日の中に立ち尽くすのみ
牧野 弘志
歴史のみえるまちづくり協会理事長賞
空見上げ春風吹くそんなとき僕の心の木が揺れている
髙井良 幸弘

                                                                  
秀作作品(21首)
毎日を走り続けて元の位置吾によく似る回転木馬
柏屋 敏秋
廃校の庭に吹雪けるさくら花少年兵の植えし記念樹
旭 千代
デイケアの帰宅の電話待ちし間に母の育てし曼珠沙華見ゆ
石塚 洋子
スーパーできみの食べてる顔浮かび頬に手をおく主婦になった日
藤野 美幸
送られし母のしろ餅よもぎ餅まるめし餅に指のあとあり
河野 恵美子
職閉ざす工場軒に干されゐる最後の作務衣に触れてみるなり
三輪 輝二 
実のらない恋ばかりしてつややかな柿の皮むく自分のために
横井 光太郎 
あの頃はカレーでよかったカチカチとスプーン鳴らして見つめ合ってた
伊藤 俊雄 
風に乗り大空を舞う大鷹は下界を噛みつくように見ている
中村 暢統 
伝えたきひとことありてユトリロの街に迷える少年となる
山下 奈美 
葉桜の風すがすがしい着なれない制服たちの顔が輝く
橋本 卓
釜の火を外からうかがい七宝を焼く火を強める汗をふきつつ
出口 奈々
ゆらゆらとくらげのように大揺れでバスが春の通りを曲がる
中山 みか
新しい大きい制服に身をつつみ友らとくぐる春の校門
合田 一平 
残さるる母を頼むと子らに言ひき夫はいのちの極まる時に
斎藤 幸子
目を病みて落語好みし亡き夫の残せしテープは時折り声とぶ
杉崎 康代
出勤の車中で開くコンパクト主婦の顔消しパチンと閉める
川平 陽子
温もりの残れる友の左手を斬りて焼きにき戦ひさ中に
長倉 良美
今までに僕がしてきた間違いをこの消しゴムで消させて下さい
島川 雅至
眠るまで崩したくない祭り髪今日一日は輝きたくて
瀬尾 恵子
野球帽うしろまえにして海を描く房総半島今日も真夏日
渡辺 克己

   
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