| 秀作作品(21首) |
六月の雨光ってる歩道には光る青葉の影踊っている
山川 彩華 |
使い継ぐ漬け物樽に水あがり野沢菜の青冴える真冬日
橋詰 明枝 |
何時の日か施設の廊下押されゆく吾の着るやもベスト編み居り
横井 さかゑ |
喜寿を過ぎ紙干場の屋根葺き替えてなお良い紙を漉くと言ふ夫
山口 絹子 |
再婚し戦死の父と別々の墓に眠れる母を恨まじ
阿久津 凍河 |
子の誰も彼もが農を継がざれば亡父が拓きし野良荒れにけり
横山 浩之 |
いつの日か一人で立って歩きたいぼくはがんばる病気よ治れく
宮下 自由 |
自らに卒業証書の和紙漉くと励める子らの吐く息白し
髙橋 外茂子 |
ネクタイを結ぶ手少しぎこちないそんなことさえ嬉しい四月
太田 叶 |
溶接の火花で赤い実習室無言で己と闘い続ける
西村 源二郎 |
降りしきる雨はけぶりて窓の外赤き傘一つ道を行くなり
岡田 絵美子 |
今日みたいに怒っていいから来てと言う母には私だけしかいない
堀江 みどり |
君に打つメールに絵文字多くするファジィな気持ちも読んで欲しくて
横井 美香 |
長梅雨で炎暑知らずの夏を啼き雨の舗道に腹見せる蝉
鵜飼 道和 |
降り止みし梅雨の雫を垂らしつつ栗の花穂はひそと揺れをり
横山 尚子 |
風邪に伏す吾に代りて出撃の戦友は還らず敗戦三日前
岡本 邦夫 |
溶接の暗闇の奥へ飛ぶ火花いつもの感覚手にもどり来る
大山 達也 |
ごほうびは満天の星ひとり占め手当のつかぬ深夜の帰途に
塩見 洋子 |
本線を分かれて車窓の冬空はかけ算の如く星の増えけり
小見 伸雄 |
「それなりに幸せです」と言うように桜の下で揺れるタンポポ
紙崎 照明 |
なわとびの少女の描く曲線をくぐりて来しと風のささやく
横井 和幸 |