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独楽吟

独楽(どくらく)吟(ぎん) 『橘曙覧遺稿志濃夫廼舎歌集』より 
橘曙覧の「独楽吟」とは「たのしみは」で始まって「・・・とき」で終わる形式でよんだ和歌のことです。
曙覧の生活や家族の幸せ、学問への態度などがよみ込まれています。

1

たのしみは 艸(くさ)のいほりの 莚(むしろ)敷(し)き ひとりこころを  静めをるとき
2 たのしみは すびつのもとに うち倒(たふ)れ ゆすり起(お)こすも 知らで寝し時
3 たのしみは 珍(めづら)しき書(ふみ) 人にかり 始め一(ひと)ひら ひろげたる時
4 たのしみは 紙(かみ)をひろげて とる筆の 思ひの外(ほか)に 能(よ)くかけし時
5 たのしみは 百日(ももか)ひねれど 成(な)らぬ歌の ふとおもしろく 出(い)できぬる時
6 たのしみは 妻子(めこ)むつまじく うちつどひ 頭(かしら)ならべて 物(もの)をくふ時
7 たのしみは 物をかかせて 善(よ)き価(あたひ) 惜(を)しみげもなく 人のくれし時
8 たのしみは 空暖(あたた)かに うち晴(は)れし 春秋(はるあき)の日に 出(い)でありく時
9 たのしみは 朝おきいでて 昨日(きのふ)まで 無(な)かりし花の 咲ける見る時
10 たのしみは 心にうかぶ はかなごと 思ひつづけて 煙艸(たばこ)すふとき
11 たのしみは 意(こころ)にかなふ 山水(やまみづ(さんすい))の あたりしづかに 見てありくとき
12 たのしみは 尋常(よのつね)ならぬ 書(ふみ)に画(ゑ)に うちひろげつつ 見もてゆく時
13 たのしみは 常(つね)に見なれぬ 鳥の来て 軒(のき)遠からぬ 樹(き)に鳴きしとき
14 たのしみは あき米(こめ)櫃(びつ)に 米いでき 今一月(ひとつき)は よしといふとき
15 たのしみは 物(もの)識人(しりびと)に 稀(まれ)にあひて 古(いに)しへ今を 語りあふとき
16 たのしみは 門売(かどう)りありく 魚買ひて 烹(に)る鐺(なべ)の香(か)を 鼻(はな)に嗅(か)ぐ時
17 たのしみは まれに魚烹(に)て 児(こ)等(ら)皆が うましうましと いひて食(く)ふ時
18 たのしみは そぞろ読みゆく 書(ふみ)の中(うち)に 我とひとしき 人をみし時
19 たのしみは 雪ふるよさり 酒の糟(かす) あぶりて食(く)ひて 火(ひ)にあたる時
20 たのしみは 書(ふみ)よみ倦(う)める をりしもあれ 声(こゑ)知る人の 門(かど)たたく時
21 たのしみは 世に解(と)きがたく する書(ふみ)の 心(こころ)をひとり さとり得(え)し時
22 たのしみは 銭(ぜに)なくなりて わびをるに 人の来たりて 銭くれし時
23 たのしみは 炭(すみ)さしすてて おきし火の 紅(あか)くなりきて 湯の煮(に)ゆる時
24 たのしみは 心(こころ)をおかぬ 友(とも)どちと 笑ひかたりて 腹(はら)をよるとき
25 たのしみは 昼(ひる)寝(ね)せしまに 庭(には)ぬらし ふりたる雨を さめてしる時
26 たのしみは 昼寝目(め)ざむる 枕(まくら)べに ことことと湯の 煮(に)えてある時
27 たのしみは 湯(ゆ)わかしわかし 埋(うづ)み火(び)を 中(うち)にさし置きて 人とかたる時
28 たのしみは とぼしきままに 人集(あつ)め酒飲め物を 食(く)へといふ時
29 たのしみは 客人(まれびと(まらうど))えたる 折(をり)しもあれ 瓢(ひさご)に酒の  ありあへる時
30 たのしみは 家内(やうち(やぬち))五人(いつたり) 五(いつ)たりが 風だにひかで  ありあへる時
31 たのしみは 機(はた)おりたてて 新しき ころもを縫(ぬ)ひて 妻(め)が着する時
32 たのしみは 三人(みたり)の児ども すくすくと 大きくなれる 姿(すがた)みる時
33 たのしみは 人も訪(と)ひこず 事(こと)もなく 心をいれて 書(ふみ)を見る時
34 たのしみは 明日(あす)物(もの)くると いふ占(うら)を 咲(さ)くともし火の 花にみる時
35 たのしみは たのむをよびて 門(かど)あけて 物もて来(き)つる 使(つか)ひえし時
36 たのしみは 木(こ(き))の芽(め)瀹(に)やして 大きなる 饅頭(まんぢゅう)を一つ  ほほばりしとき
37 たのしみは つねに好める 焼豆腐(やきどうふ) うまく烹(に)たてて 食(く)はせけるとき
38 たのしみは 小豆(あづき)の飯(いひ)の 冷(ひ)えたるを 茶(ちゃ)漬(づ)けてふ物に  なしてくふ時
39 たのしみは いやなる人の 来(き)たりしが 長くもをらで かへりけるとき
40 たのしみは 田(た)づらに行きし わらは等(ら)が 耒(すき)鍬(くは)とりて 帰りくる時
41 たのしみは 衾(ふすま)かづきて 物(もの)がたり いひをるうちに 寝(ね)入(い)りたるとき
42 たのしみは わらは墨(すみ)する かたはらに 筆の運(はこ)びを 思ひをる時
43 たのしみは 好(よ)き筆をえて 先(ま)づ水に ひたしねぶりて 試(こころ)みるとき
44 たのしみは 庭(には)にうゑたる 春秋(はるあき)の 花のさかりに あへる時(とき)時(どき)
45 たのしみは ほしかりし物 銭(ぜに)ぶくろ うちかたぶけて かひえたるとき
46 たのしみは 神の御(み)国(くに)の 民(たみ)として 神の教(をし)へを ふかくおもふとき
47 たのしみは 戎夷(えみし)よろこぶ 世の中に 皇国(みくに)忘れぬ 人を見るとき
48 たのしみは 鈴屋(すずのや)大人(うし)の 後(のち)に生まれ その御(み)諭(さと)しを  うくる思ふ時
49 たのしみは 数(かず)ある書(ふみ)を 辛(から)くして うつし竟(を)へつつ とぢて見るとき
50 たのしみは 野(の)寺(でら)山里(やまざと) 日をくらし やどれといはれ やどりけるとき
51 たのしみは 野(の)山(やま)のさとに 人遇(あ)ひて 我(われ)を見しりて あるじするとき
52 たのしみは ふと見てほしく おもふ物 辛(から)くはかりて 手(て)にいれしとき
 
* 読み方が難しいと思われる語にはふりがな及び濁点をつけ、活用語には送り仮名を補っています。
* 漢字は通行の字体を用いています。
 
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